2009年06月25日

ユカリ 由香里 終章 危機一髪

  プラットホームの白帯を見る。それは幾重にも瞼の上でかさなり、ぼけて見えた。いけね、これじゃ過労死寸前の中年サラリーマンだ。
  ホームの中ほど、ぼくはほとんど無意識のうちに白帯をまたいでおり、シルバー地にオレンジのラインがある電車がすぐそばまで迫っているのに気がつかなかった。それが鳴らした警笛の音さえも知らんぷりだった。
  運転士は、てっきり自殺志願者だと思い込み、急ブレーキをかけた。
  そのまま線路に落ちていたら、間違いなく轢かれていただろう。腕も脚も胴体とおさらばし、命さえも保証のかぎりではなかった。
  そんな惨状を寸前に救ったのは一本の細腕、だが若くて力強い腕だった。
 「危なかったわ。さ、行きましょう」
  躍動感あふれる声の持ち主は、ぼくの腕を取り、まず、駅の構外へとみちびいた。事態を知った駅員たちが駈けつけてくるより、わずかに早く。 
ラベル:予想未来図
posted by はむじの書斎 at 11:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 連載小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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