2009年06月05日

ユカリ 由香里 第4章  郷里で2

  クラス会当日。ぼくは夕方の5時半ころ家を出た。
 『迎土木建設工業』の看板が西日に映える、三階建ての社屋を横目に、雑種の愛犬『ウォン』の頭をひとなでする。命名の由来は「ウォン」と吠えるからである。
  会場の『大将亭』の座敷には、すでにおおぜいの“元”級友たちがひしめいていた。スーツ姿あり、ラフな着こなしあり、女の子たちはみな着飾っていた。ぼくはというと、青色のポロシャツに白っぽい麻のジャケット、腰から下は薄茶色のコットンパンツである。
 「おう、迎、どうしてた」 「おっす」などとあいさつして、ぼくは卓球部の同期でもあった野村の横の席についた。
  上座には二、三年生の担任だった土方先生。先生の手短なあいさつのあと、乾杯。宴会が始まった。
  宴がすすむにつれ、みんなの口も滑りがよくなってきた。「やせたな」 「ちょっとやつれたんじゃない」などと、なつかしい赤ら顔たちから声をかけられた。
  遠田さんは、ぼくのところからは対角線上のわりと離れたところで、女の子どうしで話に花を咲かせていた。
 「親友が死んだ」というショックから完治していないのと、「まだ浪人中」の後ろめたさで、ぼくは定位置のままで地味にやっていた。周りは、あっちに行ったり、こっちへ来たりして大盛況である。
 「宴もたけなわですが、ここいらで一次会をお開きにしたいと思います。それでは先生、乾杯の音頭を」
  場を仕切るのがうまい、幹事の塚越が、残りすくなくなった髪の毛の土方先生にバトンを渡した。
  宴は先生の乾杯の音頭と、全員が起立しての三本締めで終わった。
  ぼくは遠田さんと親密に話をしたわけでもなく、「義理は果たした」という気持ちで席を立ち、帰ろうとした。腕をつかまれた。すっかりいい気分になっている野村だった。
ラベル:クラス会
posted by はむじの書斎 at 17:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 連載小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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